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  • 2020.03.16
  • 2020年度から大きく変わる相続法!相続の何が、どう変わる?

配偶者短期居住権

平成30年7月に相続法が改正されました。

相続法は1980年から40年間もの間、

実質的な見直しはほとんどされてきませんでした。

 

それが社会の高齢化が加速したことで、

残された人たちや財産の保護の必要性が高まり、

改正に踏み切ったということです。

 

この記事では改正相続法が成立したことで、

相続の何がどのように変わるのか?

すでに施行されるもの・これから施行されるものも含めて

まとめてご紹介していきたいと思います。

 

一部の内容につきましては

より詳しい内容を別の記事でもご紹介していますので

そちらも併せてご覧ください。

 

配偶者居住権を創設(2020年4月1日から施行)

 

配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に居住していた場合、
遺産分割や遺贈により、終身または一定期間、その建物を無償で使用できる権利です。

 

詳しくはこちらの記事でまとめていますので

ぜひご確認ください。

 

→【3分でわかる】残された配偶者を守る配偶者居住権とは?

 

配偶者短期居住権を創設(2020年4月1日から施行)

 

最高裁判所の判例により、被相続人と同居している配偶者について、
死後から遺産分割終了までは、その居住権が認められてきました。

今回の法改正で、これを制度として法律に規定することとなり、
「配偶者短期居住権」の制度が創設されました。

 

配偶者が、被相続人が所有する建物に相続開始時に無償で居住していた場合、
遺産分割が成立するか、または一定期間が経過するまでは、
その建物に無償で住み続けることができるというものです。

残された配偶者に対して、一定期間ではありますが、
短期的な居住場所を確保する趣旨です。

 

遺産分割か、それ以外(遺言や死因贈与等)かにより、保護される期間は異なります。

専門的な内容ですので、実際に利用される際には、専門家へ相談して進めていきましょう。

 

自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能に(2019年1月13日から施行)

 

これまで自筆証書遺言は、添付する目録も含め、

全文を自書して(自分で書いて)作成する必要がありました。

 

その負担を軽減するため、遺言書に添付する相続財産の目録については、

パソコンで作成した目録や通帳のコピーなどを添付することによって

自筆証書遺言を作成することができるようになります。

 

ただし、財産目録の各ページには、署名押印が必要なのでご注意を。

 

自筆証書遺言が法務局で保管可能に(2020年7月10日から施行)

 

公証人などを介さずに、自分で作成する遺言書(自筆証書遺言)は、

遺言者自身や家族が、自ら保管し、管理する必要があります。

ですから、せっかく作成しても、紛失したり、捨てられてしまったり、

書き換えられたりする恐れがありました。

 

今回の改正により

自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)へ預けることができるようになりました。

また、遺言者の死後、法務局に遺言書が保管されているか否か、
調べることができるようになります。

 

相続をめぐる紛争(争族)を防止し、

自筆証書遺言をより安全に、利用しやすくする趣旨です。

 

この制度につきましては

別の記事で詳しく解説しておりますので

ぜひご確認ください。

 

→【2020年7月10日施行】遺言書は法務局で保管可能に!自筆証書遺言の保管制度とは

 

被相続人の介護・看病等で貢献した親族は金銭要求が可能に(2019年7月1日施行)

 

相続人ではない親族も、無償で被相続人の介護や看病に貢献し、

被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、

相続人に対し、金銭の請求をすることができるようになりました。

 

相続人ではない親族(例えば子の配偶者など)が

被相続人の療養看護をするケースがありますが、

改正前には、遺産の分配にあずかることはできず、

不公平であるとの指摘がされていました。

 

今回の改正によって被相続人を支えた人にも

実質的公平が図れるようになりました。

 

自宅の生前贈与についての、特別受益の持戻し免除(2019年7月1日施行)

 

結婚期間が20年以上の夫婦間で、

配偶者に対して自宅の遺贈または贈与がされた場合について、

遺産分割においては原則として、持戻し計算を不要としました。

 

改正前までは自宅を生前贈与した場合でも、
遺産を先渡ししたものとして取り扱われました。

これにより、配偶者が遺産分割によって得られる現金・預貯金の額が
減らされてしまうケースがありました。

 

例えば、夫婦と子供1名の家族構成で、夫の資産総額が4000万円、
うち2000万円が自宅の土地建物、2000万円が現金・預金だったとします。
この時、夫が妻へ土地建物を生前贈与したと仮定します。

この後、夫が亡くなり、生前贈与が持ち戻しされると、
妻は2000万円を先にもらったこととなり、
遺産分割時には現金・預金を一切取得できません。

持戻しが免除されれば、自宅土地建物は除外した上で遺産分割することができます。

結果、妻と子供で、2000万円の現金・預金を分割することとなり、
妻も1000万円の現金・預金を取得することが可能となります。

 

今回の改正により、自宅についての生前贈与を受けた場合は、

配偶者は結果的により多くの相続財産(現金・預金)を得られるようになり、

生活を安定させることができるようになります。

 

※旧法でも、事前に遺言等で「持戻しを免除します」と意思表示をしていれば、
それを反映させることはできました。今回の改正によって、いちいち意思表示をせずとも、
「配偶者に自宅を贈与(または遺贈)するということは、
当然に持戻しの対象外にするよね」という取り扱いに変更されました
(法律用語では「推定する」と言います。)。

 

遺産分割前に被相続人名義の預貯金が一部払戻し可能に(2019年7月1日施行)

 

改正前は、相続発生後に口座が凍結され、

相続人は遺産分割が終了するまで

被相続人の預貯金の払戻しができませんでした(最高裁判所判決)。

 

そのため葬儀費用の支払、相続債務の弁済、当面の生活費など、

お金が必要になっても対応できないケースがありました。

 

このような相続人の資金需要に対応できるよう、

遺産分割前にも預貯金債権のうち一定額については、

家庭裁判所の判断を経ずに金融機関で払戻しができるようにしました。

 

口座ごとに(定期の場合は明細ごとに)単独で払い戻すことができる額は以下の計算式です。

 

【計算式】

 

(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)=単独で払戻しをすることができる額

 

※ただし、同一の金融機関からの払い戻しは、150万円を限度とします。

 

まとめ

 

今後も相続のルールが変わる可能性は十分あります。

新しい情報を常にチェックし、

上手に賢く相続手続きを進めていきましょう。

 

相続はやることが多く、複雑な手続きでもありますから

一度は相続のプロのアドバイスを受けることをオススメします。

適切に手続きを行うことで紛争防止や節税対策となり、

残された人たちがよりスムースに、遺産を得られるようになるものと考えます。

 

相続に強い司法書士・税理士・弁護士などに

ぜひご相談ください。