コラム

当事務所からのお知らせを掲載しています。

  • 2021.03.17
  • 山林の相続はどうする?どこに相談すべき?

山林の相続はどうする?

 

土地に根差して代々居住している地主家系や農家のご家庭では、
自宅や農地の他に山林を所有しているケースも珍しくありません。

 

相続人がその存在を把握しておらず、
相続が発生して亡くなった方の財産を調べているうちに初めて判明することもあります。

 

気づかれないまま放置されてしまうケースもあり、
実際、全国的に所有者がわからない山林が増えてきています。

 

山林を相続した場合、相続登記による登記名義の変更と市区町村への届出が必要です。
また、山林ならではの問題もあるので早めに対処するべきです。

 

この記事では山林を相続した場合の対処方法についてお伝えしていきます。
必要な相続手続きや、相続したくない場合に取るべき行動をご紹介します。
宅地の相続とは異なる手続きもあるので、しっかり確認して早めの行動をお願いします。

 

山林も不動産なので名義変更や届出が必要

 

自宅やマンションなどと同様、山林も不動産に含まれます。
そのため山林を相続した場合も他の不動産と同じように相続登記手続きが必要です。

 

また、山林は相続登記に加えて届出も必要になる場合があります。
放置していても固定資産税や管理リスクが発生するため、
管理したくないのであれば早めに手を打つ必要があります。

 

山林を相続したらやるべき3つのこと

 

1.相続登記

 

山林を相続したら法務局で名義変更を行います。
相続登記にはいくつか必要書類があるので用意しておきましょう。

 

・被相続人の戸籍謄本及び住民票の除票
・相続人の戸籍謄本
・山林を相続する人の住民票
・固定資産評価証明書 など

 

ただし、遺産分割の方法によっては必要書類が異なるので注意しましょう。

 

2.市区町村へ届出

 

森林を相続したら、市区町村に所有者の届出をする必要があります。
届出期間が「相続開始の日から90日以内」と決められています。
前所有者(被相続人)の死亡から90日と考えると、届出期間が、かなり短いことが分かります。

 

遺産分割未了の場合でも、市区町村へ連絡して相談し、早めに手続きを行いましょう。
届出の際も戸籍謄本や山林の位置を示す図面などが必要になるため早めに準備しておきましょう。
もし90日を過ぎてしまった場合、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。

 

<届出の際の必要書類>

・登記事項証明書

・森林の土地の所有者届出書

・土地の位置を示す図面

・相続による権利所得がわかる書類の写し

 

※詳細は、林野庁のホームページをご参照ください。

→林野庁ホームページへ

 

3.森林組合に相続の報告と土地活用の意思表示を行う

 

山林の土地活用について、相続した山林の最寄りの森林組合に連絡を行いましょう。
山林を売りたい、管理を任せたいなどの意思表示をしておくことで、
行政が買い手や借り手を探してくれることもあります。

 

山林の管理は難しいので、自分で管理する意思がなければ森林組合に相談してください。

 

森林組合は各都道府県にあります。
「全国森林組合連合会」のWebサイトに各都道府県の連絡先が記載されていますのでご参照ください。

 

→全国森林組合連合会ホームページへ

 

山林を相続したくない時は?

 

山林を相続したくない、管理したくない場合は、3つの手段が考えられます。

 

1.相続放棄

 

相続放棄をすれば山林は相続されません。
ただし山林のみを放棄することはできず、他の不動産や現金などの財産も放棄しなければなりません。
山林の他に価値の高い財産や引き継ぎたい財産などがある場合は、この方法は推奨できません。

 

2.寄付

 

相続放棄が難しい場合は有効な活用方法を探しましょう。
レクリエーションなどで活用しやすい山林や自然保護に有用な山林など、
山林によっては自治体が寄付を受け入れてくれる場合があります。

 

寄付できる山林は限られますが、一度役所に相談してみる価値はあります。
民間企業や個人が山林を受け取ってくれる可能性もあります。

 

3.売却

 

山林を売却する方法もあります。

 

インターネット検索しますと、山林をメインに扱う不動産仲介業者なども存在するようです。
この点、山林を中心に扱う業者へ相談することを推奨いたします。

 

山林や農地の売買は、通常の宅地や建物の売買とは、毛色が異なります。
法律論や税務のお話だけで、すっきりと解決できないものがほとんどです。
地元の不動産業者や山林専門の不動産業者に相談し、地元の組合に相談することが妥当といえます。

 

ただしすべての山林が売却できるわけではありませんので、
買い手や借り手が付かない想定もしておく必要があります。

 

山林の境界線の調査が必要になることも

 

相続した山林の正確な位置や面積が分かっていないと、
山林の境界線の調査や面積の測量などを行う必要があります。
所有者の高齢化や地形変化、権利書の紛失などで境界が曖昧になり、
正しい位置を把握できないこともあります。

 

所有者や場所の特定には数か月かかるケースもあると聞きますし、当然調査費用も発生します。
山林の状況を把握できていないと寄付や売却も難しくなるため、
早めに山林の測量を行い正確な位置と土地面積を把握しておきましょう。

 

山林を放置しておくとどうなる?

 

面倒だからと相続手続きをせずに放置すると、
時間の経過で、後から手続きが困難となるケースもあります。

 

相続手続きをせずに放置すると、代襲相続等で相続人が分散したり、
行方不明になってしまい、遺産分割が困難となってしまうからです。
結果として、山林の売却処分や管理ができなくなります。

 

その上、相続登記をしなかったとしても固定資産税や管理義務は残り続けます。
将来的に配偶者や子供に山林が相続されると、
利用していない膨大な山林について毎年固定資産税を支払う必要が生じます。
「金のなる木」の真逆で「負債のなる木」となってしまうことがあるのです。

 

また、山林の放置は家族間だけの問題に留まりません。
山林の位置によっては近隣住民の不安の種になったり、
防災や災害復旧などの場面で支障が出たりします。

 

林業や山菜・キノコ採りなどができる「活用できる山林」であれば、
寄付や売却できる可能性もあります
そのチャンスを、みすみす逃してしまうことにもなりかねません。

 

山林の管理は手間も時間もかかります。
早めに市区町村や森林組合に相談して有効な土地活用の方法を見つけていきましょう。

 

特に森林組合は、間伐や下刈りといった施業委託をはじめ、
補助金や融資制度の窓口業務も行っているので非常に頼りになります。
相続については弁護士や司法書士などの相続のプロに、
山林の土地活用については山林のプロに相談し、問題を速やかに解決していきましょう。