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  • 2021.01.27
  • 親に遺言書を書いてもらう秘訣は?

親に書いてもらう

遺産相続のトラブルを未然に防ぐには、遺言書が有効です。
遺言書を作成しておけば遺産分割協議における衝突を回避でき、
スムーズな相続手続きを行えます。

しかし、メリットがわかっていても、
実際に遺言書を残している人は限られています。
ついつい後回しにしてしまう人もいますし、
「生前から死後のことを考えるなんて縁起でもない!」
と前向きに考えようとしない方も少なからずいます。

自分自身で作成に踏み切ることさえ抵抗があるのですから、
ましてや親に遺言書を書いてもらうのは気が引けるものです。

「相続のことを今から話し合うなんて縁起が悪い!」
などと反対されてしまえば関係がこじれてしまい、
余計に気が重くなってしまいます。

 

そこでこの記事では、できる限り揉めずに
遺言書を書いてもらうためにどのような方法を取るべきか?

という内容についてご紹介していきます。

当然ですが無理やり書かせてしまうと無効になってしまうので、
親の意思で書いてもらうための方法をお伝えします。

 

遺言書を無理やり書かせるのはNG

 

書いてもらいたい気持ちが過ぎてしまい、
親に半ば強制的に遺言書を書かせたくなるかもしれません。

「いいから今すぐこの場で書いて!」「この内容通りに書いてよ。」
と無理やり書かせてしまうと遺言書は無効になってしまいます。

自筆証書遺言は遺言者本人の自筆で書いたものでないと無効になりますから、
代筆は当然NGです。

遺言書を書いてもらいたい場合は、無理やりではなく
あくまで親自身が自分の意思で作成するようサポートすることが大切です。

 

遺言書を書いてほしい目的を重視する

 

「遺言書を書いてほしい」とストレートに切り出せれば楽ですが、
そううまくはいきません。もし直接切り出すのが難しいようであれば、
家族の長期的な計画を話し合う場を設けてはいかがでしょうか。

「もし介護が必要になったら介護費用をどのように負担するか。」
「父が亡くなった場合、自宅には誰が住むか。」
「家族経営の事業を誰が引き継ぐか。」など、
生前から死後のことを含めた計画を一緒に立てていきましょう。

「もしものため」の対策として具体的に話し合っていけば、
「念のため遺言書を作成しておこう。」という流れになるかもしれません。


生前贈与で生前から財産を渡しておくと相続税節税対策になる場合もあります。
より多くの財産を家族に残せるようにもなるので、
「資産形成の一環」として相談するのも一つの方法です。
急かすのではなくできる限り自然な形で今後について話し合ってみてください。

 

 

エンディングノートを提案する


遺言書という言葉に抵抗があることもあります。
形式や手続きの固さに苦手意識を感じる人は少なくありません。

一方でエンディングノートは形式のルールはなく
自由に書けるものなので心理的な抵抗は抑えられるはずです。

文具店や書店などではエンディングノート用の作成キットが市販されていて、
自分の気持ちを吐き出しやすく設計されているものもあります。
アンケートに答えているような感覚で自分の将来について考えられるので効果的です。

エンディングノートを作成していくうちに自分自身の気持ちに気づいて
しっかり遺言書で残しておきたいという気持ちが芽生える可能性があります。


エンディングノートの書き方については
こちらの記事でもご紹介していますのでご参考ください。

→エンディングノートの書き方

 

遺言書の作成を手伝う

 

親自身も書いた方が良いこと自体はわかっていることがあります。
いつか書こうとは思っているものの、面倒だと感じていたり
知識がなく作成方法がわからなかったりするとなかなか動きづらいものです。


遺言にはいくつか種類があり、
主に自分で作成する自筆証書遺言と公証人が作成する公正証書遺言があります。

 

自筆証書遺言の場合は自分で作成する必要があり面倒であることと、
形式の不備やミスが起こりやすいデメリットがあります。
また、原則として自筆証書遺言は自分で管理しなければならないので
紛失や破棄の危険があります(法務局に自筆証書遺言を保管する制度もあります)。


公正証書遺言は、費用がかかりますが、公証人が作成するため
形式の不備は基本的に起こらず、紛失や破棄の危険がありません。

公正証書遺言の場合は公証役場に申し込む必要があるので、
証人にはなれませんが、子供が親と同行することで親にとっても
不安がなく遺言書を作成できることが多いです。


親に任せきりにするのではなく一緒に考えたり勉強したりする時間を作りましょう。
親だけでなく自分も一緒に遺言書を書くのも良い方法です。
遺言書は高齢者が書くものではなく、若い人でも資産があって
配偶者や子どもがいる場合は作成すべきです。

遺言書は何度でも修正可能なので、
定期的に一緒に遺言書を作成する機会を設けても良いかもしれません。

 

 

相続に強い専門家に相談する


親に遺言書を書いてもらいたい場合、
弁護士や司法書士等の専門家に相談することも検討しましょう。

遺言書のメリットや効果を子どもから説得しても納得してくれない場合があります。
相続に詳しい専門家からアドバイスをもらうことで
親にとっても理解しやすく行動しやすくなることがあります。

相続は複雑で手間のかかることですから、
手続きを確実に進めるためにも専門家のアドバイスは助けになるはずです。
もちろんアドバイスだけでなく遺言書作成や
相続手続きそのものをお願いすることもできます。


遺言者とご家族にとって最も安心できる形で財産を引き継げることが何より重要です。
親子だけでは解決しそうにない場合や実際にトラブルに発展してしまっている場合は、
一度相続に詳しい弁護士や司法書士等の専門家にご相談ください。