コラム

当事務所からのお知らせを掲載しています。

  • 2021.01.29
  • 独身・単身者の相続はどうなる?注意点と対策

単身者

 

高齢化や晩婚化、熟年離婚などが増える中、独身で亡くなるケースも少なくありません。

国立社会保障・人口問題研究所が発行した「人口統計資料集2020」によると、
2015年次の50歳時の未婚割合(生涯未婚率とも呼ばれます)は
男性23.37%、女性14.06%となっています。

統計調査上では50歳男性の5人に1人が生涯独身であるという結果です。
もちろん結婚を強制するものではありませんし、
独身を貫くこと自体は全く問題ありません。

この記事で独身者が亡くなった場合の財産の行方について解説していきますので、
あらかじめ理解し早めに対策しておきましょう。

 

遺言書を残していた場合は遺言書の内容が優先される

 

遺言があった場合は遺言書の内容が優先されます。
兄弟姉妹よりも自分がお世話になった
他人に財産を渡したいのであれば遺言書を作成しましょう。

遺言書を書いておけば親しい友人やお世話になった師匠や

弟子などに財産を渡せるようになります。
慈善団体等に寄付することも可能なので、遺言書にその旨を残しておきましょう。

遺言書の内容を確実に執行してほしい場合は、

生前から相続に詳しい弁護士や司法書士等の専門家に相談しましょう。
遺言の内容によっては、専門家に遺言執行者になってもらう必要があるかもしれません。

 

遺言書がなく父母や祖父母、兄弟姉妹がいる場合


独身者でも父母や兄弟姉妹がいる場合は、

父母や祖父母、兄弟姉妹が相続人となり相続されます。
父母や兄弟姉妹がいない場合は甥や姪が代襲相続します。

独身者が亡くなっても法定相続人がいるのであれば法定相続人が相続します。
なお、離婚していた場合は元配偶者が相続権を得ることはありません。

 

子どもがいる場合

 

独身でも子どもがいるケースがあります。
実子や養子であれば相続順位1位に該当するので全財産が相続されることになります。

 

被相続人が男性の場合、子どもを認知しておらず戸籍に反映していない場合は
法定相続人の「子」として認められないため相続できません。
ただし現代ではDNA鑑定で親子鑑定ができるため、父親の死後三年以内であれば、
検察官を被告として死後認知訴訟を提起して、父の相続人になることが可能です。

 

一方、被相続人が女性の場合は子どもが生まれた時点で必然的に戸籍に記録されます。
養子に出した子であっても法定相続人の「子」であることに違いはないため
全財産が相続されます(特別養子を除く。)。

 

身寄りのない人が亡くなった場合は国庫に帰属する

 

遺言書がなく、親や兄弟姉妹、子どもがいない場合、財産は国庫に帰属します。

ただし、法定相続人に当てはまらなくても、
「特別縁故者」として家庭裁判所に認められると
特別縁故者が被相続人の財産を相続できます。

特別縁故者と認められるのは主に以下のケースです。

1.被相続人と生計を同じくする者(内縁の妻など)
2.被相続人の介護や療養の世話をしていた者
3.「特別の縁故があった者」と裁判所が認めた者(親代わりなど)

なお、特別縁故者は非常に厳しい審査基準が設けられています。

密接な関係のない赤の他人が相続してしまうような事態はあってはならないからです。
特別縁故者になろうと家庭裁判所に申し出ても、
最終的に特別縁故者が所有権を取得するには、少なくとも1年以上の期間が必要です。

特別縁故者は遺言書がなく相続人もいない場合の最終手段と捉えてください。

 

自分の財産を把握し、準備しておきましょう


自分が亡くなった後の財産の扱い方については元気なうちに考えておきましょう。

特に財産を渡したいが法定相続人でない人がいる場合は必ず遺言書を残しておきましょう。

お世話になった人、介護をしてくれた人や親しい友人などは身内でなければ
どんなに密接な関係であっても相続権がありません。
仮にその人達が特別縁故者になろうと申し出ててくれたとしても1年以上期間を要し、
しかも必ずしも認められるとは限りません。

特定の人に確実に財産を渡したいのでしたら遺言書の作成をおすすめします。
地方公共団体やNPO法人等に寄付したい場合も遺言書に明記しておきましょう。

 

エンディングノートの作成もおすすめです。

エンディングノートは遺言書とは違い、
形式のルールがなく自由に気持ちを記せるものです。
好きな形式で自分史や大切な人へメッセージなどを残しておくことができます。

また、エンディングノートに自分の財産がどこの口座にどれくらいあるのか
一覧表にして記録しておくと良いです。

独身者が亡くなった場合の財産調査は少々手間がかかります。
財産を一覧表にしておけば第三者でも確認しやすくなります。
ネット証券やスマホ決済等のインターネットサービスを利用している場合、
利用しているサービス名やID・パスワードも記録しておきましょう。

エンディングノートを書き始める前では特に考えていなかったとしても、
書いていくうちに自分の将来について考えるキッカケになり、
遺言書を残す気持ちが湧いてくることもあります。

ぜひこれを機にこれからの人生の過ごし方や財産の残し方について
計画を立ててみてください。

エンディングノートの作成方法については
こちらの記事もご覧ください。

 

→エンディングノートの書き方


なお、遺言書については形式の不備やミスがあると無効になってしまいます。

日付の記載漏れなどの些細なミスでも無効になりますから注意が必要です。

遺言書の書き方や相続について悩まれている方、より良い形で財産を残していきたい方は、
相続に詳しい弁護士や司法書士等の専門家にご相談ください。