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  • 2020.04.26
  • 何からやればいいの?相続財産の調査方法

財産調査

 

家族の誰かが亡くなり傷心の中、真っ先にやるべきことは葬儀の準備です。

しかし無事葬儀が終わったとしても、次にやるべきことが控えています。

本格的な相続財産の調査・遺品整理が、ここから始まるのです。

 

今回はその相続財産の種類や調査方法について簡単にお伝えしたいと思います。

 

※「遺産」と「相続財産」

この記事では、おおむね同じ意味で考えてください。

厳密な用語の違いなどには立ち入らず、ざっくり考えていただければ良いと思います。

 

ここでは、すべてプラスの財産とマイナスの財産を合わせたものとして

「相続財産」の用語で統一しています。

学際的には、2つは異なる概念のようです。

 

 

1.プラスの財産・マイナスの財産

 
 

相続財産には大きく分けて2種類があります。

プラスの財産とマイナスの財産です。

 

人によっては生前にカードローンや住宅ローンなどを利用し、

完済する前に亡くなられた方もいらっしゃることでしょう。

 

亡くなった後も借金そのものは当人の負の相続財産(マイナスの相続財産)

として残るので、こちらも相続の対象になります。

 

 

相続財産調査の対象となる財産の例

 

相続財産として調査する財産は以下の通りです。

 

◎プラスの財産一覧

 

■動産

・預貯金

・現金

・貸金庫内の財産

・貴金属

・家財道具

・各種コレクション

・その他故人が生前所有した各種動産全般

 

■不動産

・宅地、農地、山林、原野、田畑など各種土地

・借地権、借家権など権利

・マンション、戸建住宅、工場、店舗、立体駐車場など各種家屋・設備

・その他故人が生前所有していた各種不動産全般

 

■各種債権、有価証券

・貸付金債権

・未収報酬債権

・損害賠償請求権

・株式、投資信託、仮想通貨など投資資産

・国債

・高額の会員権(例:ゴルフ会員権)

・著作物や工業所有権などの知的財産権

・その他各種請求権など

 

◎マイナスの財産一覧

 

 借入金(各種ローン、割賦払い、クレジットカード支払いなど)

 各種未払金

 預り金、敷金・保証金の返還債務、買掛金、前受金など

 保証債務、連帯債務

 各種税金

 その他故人に支払い義務のある各種負債

 

※住宅ローンについて

 

「住宅ローンの名義人が急死してしまった!ローンはどうなってしまうのか?」

という質問は、案外多いものです。

 

実は、こういったケースは、あまり心配する必要がありません。

 

一般的に、住宅ローンは、団体信用生命保険(「団信」と呼ばれています)によって、

完済されることとなるからです。

 

契約者が急死した場合の保険として、

住宅ローン特有の生命保険が抱き合わせで契約されているものなのです。

 

 

マイナスの財産の調査も怠らないこと

 

財産相続と聞けば多くの人はプラスの財産を連想することでしょう。

 

しかし、遺産相続の際はプラス・マイナス両方が相続対象となり、

どちらかだけを選んで相続することはできません。

 

そのため、財産調査の際は上記でリストアップしたマイナスの財産についても

しっかり調査しておく必要があります。

 

 

マイナスの財産が多いなら相続放棄

 

プラス・マイナス両方の財産について全て調査した結果、

マイナスの財産が存在し、その額がプラスの財産で相殺しきれない場合、

遺産相続を放棄するという手もあります。

 

相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとみなされます。

 

結果、プラス・マイナス両方の相続財産を、ともに相続しないことになりますので、

たとえマイナスの財産が上回ったとしても、相続放棄した相続人は、

債務を一切返済する必要がありません

 

しかし相続放棄した場合、プラスの財産も相続できなくなります

プラスの財産の中でどうしても相続したいものがある場合は、

プラス財産の範囲内でマイナス財産を承継する限定承認という方法もあります。

 

ちなみに限定承認は、故人の財産状況が不透明な場合も用いることが出来ます。

 

 

2.さて、どうやって財産を調べるか?

 

自宅をくまなく捜索!

 

あたりまえですが、最もシンプルかつ効果的な方法です。

これが、入口といっていいでしょう。

 

故人が生前住んでいた自宅または部屋を、遺品整理を兼ねて片付けます。

 

片付けながら自宅をくまなく捜索すれば

ほとんどの遺品現物とその手掛かりがそこにあるはずです。

 

たとえその場に現物がなくても、

郵便物やメモなど手掛かりが残っているケースも多いので

しっかり探してリストアップしておきましょう。

 

どんな点に注意していけばよいのでしょうか。

具体的な注意点を、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

 

通帳の調査

 

財布のキャッシュカードや通帳の現物を調査します。

これには、2つの重要な意味があります。

 

第一に、各預貯金の残高を調査するという趣旨です。

考えてみれば、当たり前のことです。

死亡時の預金残高が相続財産となるわけですから。

 

第二に、本人の各種取引を明らかにする趣旨があります。

これが、案外重要です。

 

単に普通預金・定期預金等の預金残高を調べるというだけでなく、

付随的に故人の入出金から思いがけない債権・債務が発見されることがあるのです。

 

ところで、我々は、破産手続きの申立書類の作成を依頼されることもあります。

破産手続きの中では、裁判所・管財人が、破産者の通帳をくまなく調査します。

預金通帳には、持ち主のお金の流れが事細かに記録されており、

皆さんが想像する以上に貴重なデータが残されているものなのです。

 

個人名の入出金、クレジットカードの引き落としなど、

重要な情報を引き出すことができるはずです。

 


※近年、通帳不発行としオンラインで履歴を確認する場合も多いです。

このような場合でも、キャッシュカードは発行されているはずですので、

確認してください。カード裏面記載のカスタマーセンター等に問い合わせれば、

履歴を開示してくれます。

 

 

不動産について

 

本人所有の権利証と納税通知を調べるのが一般的です。

 

(1)権利証

 

権利証は、「登記済権利証」または「登記権利情報」などといった

表題の厚紙の冊子にまとめられていることが多いです。

表紙には司法書士事務所の名前が記載されています。

 

これを見れば、本人所有の不動産は、おおむねわかりますが、

実際には、売却済みの場合もあります。

 

権利証に記載された物件について、

実際に最寄り法務局で登記事項証明書を取得し、

権利関係を調査する必要があります。

 

特に、自宅以外の物件については、登記事項を確認したほうがよいでしょう。

 

 

(2)納税通知

 

毎年、4~6月頃に固定資産税の納税通知等が送られてきます。

 

納税通知を調べれば、おおよそ固定資産の一覧がわかります。

我々が相続事件を受任する際も、

最初の面談時に納税通知を持参するようお願いしています。

 

 

郵便物が重要!

 

軽視しがちですが、大変重要です。

 

(1)請求書・督促書など

 

督促書、支払いの請求書から、カードローンやクレジット使用履歴がわかります。

 

これに基づいて、カード会社に対して、履歴開示や残高開示を行ってください。

 

通常、この場合に戸籍等の相続関係の証明書が求められますので、

各業者に必要な書類を確認してください。

 

特に自営業などで、昔から消費者金融やクレジット会社で

キャッシングを利用していた方は、場合によっては

過払金が生じている可能性もあります。

 

専門の弁護士・司法書士に合わせてご相談いただくとよいと思います。

 

近年、かなり事例として少なくなってはいますが、

可能性があることは、頭の片隅に置いておいてください。

 

(2)証券会社からの「投資状況のお知らせ」など

 

定期的に投資状況のお知らせが証券会社から届いているはずです。

投資信託や上場株式の情報が記載されているはずです。

 

(3)保険会社からの「契約内容のご連絡」など

  

保険契約は、金額も高額な場合が多く、非常に重要です。

 

保険会社は、定期的に「契約関係のご連絡」といったような、

保険契約の内容を確認する郵便物を送ってきます。

 

また、秋口には、年末調整のための保険料控除証明書を送付してきますので、

ここから保険契約の存在が分かる場合もあります。

 

厳密にいうと、法的には保険契約による保険金は、相続財産ではありません。

 

故人と保険会社との契約により、故人が保険会社へ納付した金銭を、

保険会社が、死後に保険金として受取人へ交付するという

契約に基づくものだからです。

 

お金の流れをイメージすると、理解しやすいです。

被相続人(故人)から、相続人へと、

まっすぐお金が流れていくわけではありませんから。

 

とはいえ、被相続人の死亡を原因として交付されるという点で、

相続財産に類似するものと言えます。

 

税務上は「みなし相続財産」として、相続税計算の際には考慮されます。

なお、保険金は相続財産ではありませんから、

相続放棄したとしても受け取ることができます。

 

ここは、重要なので覚えておいてください。

 

 

貸し金庫を開けるには?

 

そもそも貸金庫利用の有無は、どこからわかるのでしょうか。

 

これは、通帳の記載です。

 

通常、自宅近くで頻繁に利用する銀行(メインバンク)で

貸金庫を利用することが一般的かと思います。

 

必ず、普通預金口座を持っているはずです。

 

また、口座から、貸金庫利用料金が引き落とされているはずです。

 

貸金庫を開封するには、基本的に、

相続に伴い預金口座を解約する場合と同じ手続きを踏むことになるのが一般的です。

 

戸籍や印鑑証明、開封の依頼書のような銀行所定の書式です。

 

相続人が複数いる場合は、開扉の際、原則として全員が立ち会う必要があります

(委任状により一部の者だけで開扉を認める金融機関もあります)。

 

ところで、公正証書遺言などがあり、

遺言執行者が選任されている場合は、少し事情が異なります。

 

公正証書遺言が残された場合は、通常、遺言執行者が指定されています。

 

また、遺言執行者を選任する文言の中に、

「貸金庫の開封の権限」も付与されているはずです。

 

遺言執行者が指定されていれば、煩雑な書類を集める必要なく、

スムーズに手続きを進めることができます。

 

まとめ

 

今回は相続財産の種類と調査方法について、ご紹介しました。

 

「まず、入り口として、ここを押さえよう!」というポイントに

絞って解説してみたつもりです。

 

まず、私どもが、最初の面談で聞き取る、相続財産調査の「はじめの一歩」の部分です。

 

上述しましたが、これらは、破産手続きの調査に類似しているように感じます。

 

私見ですが、破産手続きでは、

通帳の調査と郵便物の調査が特に念入りに行われているような印象を受けます。

 

この2つの要素が、個人資産を紐解いていく

大きな手掛かりになるということなのでしょう。